ベンチャー企業への転職で知っておきたいこと

キャリア 転職

ベンチャー企業への転職ってぶっちゃけどうなの?

ベンチャーじゃない会社と選考基準は違うの?

終身雇用信奉が薄くなり、日本でも転職をしながらキャリアを築いていくという考えが定着しつつある中、ここ2〜3年でベンチャー企業志望の転職者の方が増えてきました。
そこで、今回はベンチャーへの転職に関する情報をご紹介したいと思います。

最初に自分なりの結論を言ってしまうと、ベンチャー企業で経験をすることは職種に限らずお勧めです。
理由は追って説明していきます。

ベンチャー企業とは

この記事では、まだ”攻めのフェーズ”にいる保守的でない新興企業を「ベンチャー」と呼びます。ベンチャーとスタートアップは違うという意見もありますが、今回は区別はしません。

機械学習のプリファード・ネットワークスのようなIPO前のベンチャー企業や、メルカリのようなIPO後の(でもまだベンチャー気質がある)企業も区別せずに書きますが、前者のような会社は、以下に述べていくベンチャー企業の特徴がより強く、後者は前者とベンチャー以外の企業の中間に位置するイメージです。

また、ベンチャーと聞いて多くの方が思い浮かべるのがITであることから、業界はテクノロジー関連(FinTech、EdTech、MedTech、SNS、E-commerceなど)に限定します。

最後に、外資がベンチャーのフェーズで海外進出することはそう多くないことから、基本的に日系企業について書いていきます。しかし、外資についても少しだけ書きますので、日系に興味のない方もよかったら外資ベンチャーについてだけでも参考にしてください。

ベンチャー企業の特徴と魅力

ベンチャーに以下のようなイメージを持っている方が多いのではないでしょうか?

  • 組織構成がフラットで、上下関係の概念が薄い
  • 企業の成長スピードが速い
  • 若手でも大きな仕事を任される
  • 意見を自由に言える
  • ストックオプション付与などがあり、アップサイドが見込める
  • 労働時間が長い
  • 倒産リスクがあり、雇用が不安定
  • 給与が安い

実際にベンチャーで働いている方の話を聞くと、個々の会社で事情は異なるものの、概して上記の特徴が当てはまります。しかし、ストックオプション付与には慎重な会社も少なくなく、入社時の職位等によってはもらえないことも少なくありません。その代わり、社員の就業環境に注意を払う企業が増えてきているため、長時間労働は以前に比べて減ってきています。

上記の通り、基本的にベンチャー企業は労働に対する対価という視点でのコスパは良くありません。しかし、これを補って余りある魅力として、やりがいと経験値の獲得があります。

大企業に比べ、自分のやったことの結果がダイレクトにわかることが多いので、やりがいを感じやすいことは想像に難くないと思いますが、ベンチャー勤務は、仕事の経験値獲得にも以下の理由から有利です。

  • 自分の意見が言いやすい = 自身の考えに対して先輩や上司のフィードバック(ダメ出し含む)を得られる
  • 一人に割り振られる責任が重い
  • 社内政治や、おべっかなど、実業務に必要のないことに時間を割かなければいけないことが比較的少ない
  • 事業の構築フェーズ(労働市場で価値が高い)での経験が積める

こうした経験を積んだ人材は、ベンチャーに限らず中規模以上の会社でも評価されます。このため、長期的にはベンチャー以外でキャリア形成していきたい方も、一時的にベンチャーで自分を鍛える、というキャリア戦略を検討する価値があります。

最大の懸念点、給与と安定性

残念ながらベンチャーの給与は、比較的低く設定されていることが多いです。低い給与でも会社の理念に共鳴してくれる人を求めているため、現職未満でのオファーもざらにあります。

しかし、仮にあなたがキャリアで一番重視するものが収入であったとしても、目先の給与だけに捕われるのは得策ではありません。自分のキャリアで収入面を考えるときは、(今すぐお金が必要な特別な理由がない限り)基本的には生涯収入を気にするべきです。給与の上昇は、能力に因るところが非常に大きいので、当然能力の獲得に直結する経験の質に留意する必要があります。

上記を踏まえると、仕事から得られる”金銭的利益”は、現在の給与と純粋なイコールの関係では結ばれず、”金銭的利益 = 給与×得られる経験の有用度”と見るのが、特に中長期的には得策です。ここで言う得られる経験の有用度とは、純粋にその経験によって将来的に自分にもたらす収入面の利益と相関関係にあるものとします。

例えば、給与は良いものの、有用な経験が得られないA社は、
給与1,000万円 × 得られる経験の質の係数 1.1 = 得られる金銭的利益1,100万円換算

上記に対し、給与は劣るものの、有用な経験が得られるB社は、
給与800万円 × 得られる経験の質の係数 1.5 = 得られる金銭的利益 1,200万円換算

正確には、自分がこれから何年働けるかなども考慮に入れなければならず、上記は単純過ぎる計算ですが、目に見える給与にだけ注目するのはもったいないということを理解する助けにはなると思います。
そして、ベンチャーは概して”得られる経験の有用度”が高いです。

次に、安定性ですが、ベンチャー企業全体で言えば、ベンチャーでない企業と比較し、廃業率は高めです。
ただし、以下の通り、新規事業を全産業で見たとき、開業率よりも廃業率が高いのに対し、IT(情報通信業)については数字が逆になります。絶対に安全とは言いませんが、会社選びをしっかりすることで、失業のリスクは減らせます。

出典:中小企業・小規模事業者の新陳代謝 2018年度版

また、”究極のキャリアの安定性”とは詰まるところ、安定した会社で働くことではなく、いくらでも再就職、独立などで自活していける人材になることです。それを考えると有用な経験を得られるベンチャー企業で働くことはリスクに対するリターンが高いのではないかと思います。

結論としては、全てのベンチャー企業を十把一絡げに給与、安定性の観点から忌避するのではなく、一社一社しっかりと見て自分のニーズに合ったものがあるか判断していくことが肝要だと思います。

ベンチャーが求める人材

ベンチャーが求める人材は募集ポジションの専門性に加え、主に以下の四点が高いレベルで要求されます。

事業への興味

おそらく最も多くのベンチャー企業が重視しているのが自社事業への興味です。ベンチャー企業の多くは自社のビジネスが好きだからという気持ちで繋がっており、それが事業を推進する原動力になっています。このため、いくらスキルフィットする人でも、事業への興味が薄いと内定獲得は難しいです。最低限、応募先のサービスを使い(BtoBはこの限りでない)、提供しているサービスについて自分なりの意見を持つ必要があります。

仕事の範囲を限定しないメンタリティ

ベンチャー企業は仕事を細かく細分化して割り振るほど人材が潤沢ではありません。また、成長フェーズの真っ只中にいるため、今までなかった業務が出てくることがよくあります。このため、自分の仕事はここまで、と線引きしそうな人は面接を通過させません。

自主独立の精神

大手企業などと違い、一から十までトレーニングしてくれることはありませんので、指示待ちに終始せず、自分で考えて行動できる人、質問するときは自分でしっかり考えてから他人に聞くような人を求めています。特に面接中に質問する際にはググればすぐわかるようなことを質問しないように注意しましょう。

コミュニケーション能力

当たり前に聞こえるかもしれませんが、意外と人によって差のあるスキルです。面接では”丁寧に、完璧に”答えることを目指すのではなく、自然な会話を成立させることが重要です。その企業に本当に興味があれば、そうした会話をすることはそう難しくないと思います。上手く面接をこなすよりも多少不器用でも熱い気持ちをぶつけた方が良い結果になるこも少なくありません。

外資ベンチャー

数は少ないですが、外資ベンチャーが日本に進出し、採用活動をすることもあります。最近だとBoxやWoltのようなIT企業、また、ペイメントや、投資運用アプリなどのFin-tech系企業が例に挙げられます。

外資ベンチャーも日系ベンチャー同様の特徴がありますが、給与は高めの設定が多いです。ただ、日系ベンチャーの完全上位互換というわけには行かず、以下の二点がダウンサイドとして挙げられます。

安定性

日系ベンチャーで職を失うのは通常廃業する時ですが、外資ベンチャーの場合は、廃業の前段階として、日本からの事業撤退リスクもあります。

業務内容

HQでないとどうしても事業の中心にいるとは言えません。ベンチャーに限りませんが、特にIT系ベンチャーは新しいサービスなど、おもしろいことはHQで起こるため、外資ベンチャーでの仕事はこの点で見劣りしがちです。

とは言え、魅力も多いので、上記二点を踏まえても、外資ベンチャーを自分の転職候補から外すことはないと思います。

ベンチャーへの転職について、駆け足でご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。

ベンチャーの魅力は、なんと言っても積める経験値の高さと自己成長の早さです。ただ、玉石混淆なので玉を見極める目が大切になります。
実は私自身前職でEdTechのベンチャーに勤めていたのですが、私の場合は石を選んでしまい、すぐに辞めてしまいました。しかしそれでも積めた経験だけを見れば、無駄ではなかったと思います。また、今多くの転職者の方とお話しする中で、ベンチャー勤務経験のある方の活躍を見ていると、ベンチャーで働くことはキャリア構築する上で大きな優位性があると感じます。