【法務・コンプライアンス人材限定】オイシイ仕事は何?

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オイシイ仕事はなんですか?

リクルーターとして普段お話しするのは転職活動中の方だけではありません。日常業務のかなりの時間をまだ転職を考えていない人とお話することに使います。将来のキャリア設計のお手伝いをし、関連情報を共有するためです。その際によく聞かれる質問Top3に入るのが冒頭の質問です。(ここまで直接的な聞き方とする方は少ないですが)

何を持って「オイシイ」とするかは意見が分かれるかと思いますが、給与中央値、仕事の安定性、つぶしの効き具合で判断するなら、アセマネ(アセットマネジメント)コンプラインスを推したいと思います。
※アセマネコンプライアンスは非常に高度な知識、判断力、情報のキャッチアップが常に必要な仕事であり、決してオイシイだけの楽な仕事ではないことをご理解いただければ幸いです。カジュアルな書き方をしていますが、アセマネ業界にいらっしゃる方に不快な思いをさせる意図はございません。

  1. アセマネコンプライアンスとは
  2. アセマネコンプライアンスは何故オイシイ?
  3. 全業界最高の給与中央値
    逆ピラミッドの職位構成
    広いセーフティネット
    マフィア的排他性

  4. どうやったらアセマネコンプライアンス職に就けるのか
  5. まとめ

アセマネコンプライアンスとは

アセマネコンプライアンスとはその名の通り、アセットマネジメント会社(投資運用業務を生業とする企業)でコンプライアンス業務に従事するポジションです。金融機関は、最低一人コンプライアンス担当を当局(金融庁や関東財務局)に登録する必要があるため、その被登録要員となること、また、自社のコンプライアンス業務(当局対応含む)を広く担当することがミッションとなります。

アセマネコンプライアンスは何故オイシイ?

では、何故アセマネコンプライアンスは「オイシイ」のでしょうか。答えのいくつかは、上述したアセマネコンプライアンスの特性にあります。
以下に詳しく紹介をしていきます。

全業界最高の給与中央値

法務・コンプライアンス分野で給与の最高値が高いのは、法律事務所(一部のパートナーの収入が非常に高い)、外資証券、コンプライアンス系コンサル、外資アセマネの順ですが、中央値で比較するとアセマネコンプライアンスが一番高く、つまり高給を狙える可能性が最も高い分野になります。

逆ピラミッドの職位構成

アセマネコンプライアンスは、数少ない(唯一かもしれない)シニアレベルのポジションになるほど数の多くなる職種です。

通常、世の中にあるポジションは職位が上になればなるほど席が少なくなっていきます。例えば、事業会社のコンプライアンスポジションは、スタッフレベルであれば日本国内に無数にりますが、部長レベルとなるとそう多くはありません。これは他の分野でも同様で、シニアレベルになればなるほど「椅子取りゲーム」の様相を呈してくることは、企業で働く方であれば想像に難くないと思います。

これがアセマネコンプライアンスでは逆になるため、長期のキャリア形成において非常に有利と言えます。

理由は、国内にあるアセマネの会社規模です。特に外資にその傾向が強いですが、日本国内のアセマネは有名なところでも比較的社員数が少なく、10数名の企業もざらです。このため、多くのアセマネでは、コンプライアンスオフィサーが一人(Stand-Alone Head of Compliance)しかいません。こうした場合、一人Headなので、通例シニアな人を雇用します。シニアでない(Head of Complianceを務めるには早い)コンプライアンス人材を雇用する企業は複数名コンプライアンス担当が在籍するアセマネだけですが、そうした企業は少数派です。(コンプライアンスチームに2名という企業はちらほら見えますが、5名も6名もいるところとなると数えるほどです)

さらに、アセマネは他の金融機関に比べ会社数が多いため「会社がたくさんあって、そのほとんどが一人Head of Compliance(シニアレベル)を必要としている」状態になり、他の職種とは真逆の「シニアレベルほど席が多くなる」ことになります。

広いセーフティネット

アセマネコンプライアンスは一旦職についたら、何かあったとき(なんらかの理由で職を離れる必要があるなど)も同業他社でのポジションを探すことが比較的容易な点で、他の分野のコンプライアンス・法務職と一線を画します。

一つ目の理由は、前述した「シニアレベルになるほどポジション数が多くなる」ことが挙げられます。理由問わず、突発的にポジションを失う可能性が高いのはシニレベルの方です。給与が高いので金銭的な理由での解雇、影響力が強いので政治的な理由で解雇、など、シニアになればなるほどリスクも増えます。そして、残念なことにアセマネコンプライアンスを除き、ほとんどの職種ではシニアレベルになるほどポジションは少なくなり、「経験豊富でできる人ほど職が見つからない」という現象が起きます。このような中、アセマネコンプライアンスの持つ逆ピラミッドの職位構成は魅力的なセーフティネットになります。

二つ目の理由は、次に説明する「マフィア的排他性」です。

マフィア的排他性

アセマネコンプライアンスがオイシイ理由三つ目は、排他性です。界隈では、アセマネコンプライアンスマフィアと呼ばれるくらいにその「ファミリー」に入り込むのは困難です。
しかし、排他性が高いことが、全業界最高の給与中央値を叩き出し、広いセーフティネットを提供し、更にはアセマネコンプライアンス界に他所から入ってくる「外敵」を防ぐことに繋がります。

アセマネコンプライアンスは、とにかく業界未経験者を採用することが極端に少ないです。
他業界のコンプライアンスや法務ポジションは、業界経験がなくとも、コンプライアンス・法務経験があれば業界をまたいだ転職もそう珍しくありません。強いて言えばヘルスケア業界は例外的ですが、アセマネ業界と比べれば、まだ他業界から採用しています。
金融コンプライアンスも業界外から採らないイメージがありますが、金融内であれば、証券、銀行、保険間である程度人の行き来があります。

極端に他所から人材を採らないアセマネの排他性が全業界でもズバ抜けている例としてわかりやすいのは、アセマネをクライアントとしている弁護士ですら、選考で無双できない点でしょう。

どこの業界でも、自身の同業他社に対しサービスを提供している法律事務所勤務の弁護士採用に前のめりです。例えば製薬会社をクライアントとして仕事をしている弁護士は、製薬会社の法務・コンプライアンスポジションにひっぱりだこですし、IT、メーカーでも同様です。

しかし、アセマネコンプライアンスでは、「アセマネ企業で社員として働いた経験」が非常に重視され、長年アセマネクライアントの対応をしてきた弁護士と、アセマネ業界でのコンプライアンス歴が数年の候補者が選考で拮抗するということも散見されます。

この特殊な排他性は、「ファミリーメンバー」にとってはオイシイを構成する重要要件の一つです。

どうやったらアセマネコンプライアンス職に就けるのか

それでは、どうやってこの排他性をかいくぐり、ファミリーの一員になることができるのでしょうか。

いくつか例を挙げます。

コンプライアンスはさておき、アセマネ業界に入る【若手限定】

アセマネコンプライアンスの採用傾向として、「コンプライアンスや法務の経験はないけれどアセマネ業界経験あり」と、「アセマネ業界経験はないけれど、コンプライアンスや法務に自信あり」の人材であれば、前者を採用する傾向にあります。(採用後活躍している成功例は後者の方が若干多い)そこで、オペレーションや、投資運用の職務で一旦業界の中に入ってしまえば、その後コンプライアンスに移るチャンスが生まれやすいです。

海外ヘッジファンドを狙う【セルサイド在籍者限定】

運用会社でも、ヘッジファンドはセルサイドからの採用を好む傾向にあります。企業文化など含め、セルサイド出身者の方がフィットするという判断も当然ありますが、加えて外資ヘッジファンドは、海外オフィスでセルサイドからコンプライアンス・法務人材を採用しまくっているため、日本でもこうした慣例に従う傾向があります。

「マフィア的排他性」を持っているのは、日本である程度以上に期間営業をしている会社に限ります。

上記に当てはまらない方

最適解は、これを読んでいるみなさんのバックグラウンドによってくるので、ご興味があったらお問い合わせから直接ご質問ください。

特に金融分野で活躍している弁護士の方は、個別のアセマネ企業によって異なるものの、対策をすることで内定獲得の可能性が飛躍的に上がります。

まとめ

  1. 「オイシイ仕事は?」との回答は「アセマネコンプライアンス」。
  2. アセマネコンプライアンスがオイシイ理由は、給与中央値の高さ、シニアポジションの多さ、ジョブセキュリティ、外敵の侵入し辛さなど。
  3. アセマネコンプライアンス職に就くコツは、業界へ飛び込むことと、外資ヘッジファンドを狙うこと(条件付き)
  4. 自社が良いワークライフバランスであってもそれを上手く採用ターゲットに伝える必要がある。
  5. オイシイ職にも大変な面もある。本当な「オイシイ仕事」ではなく、本当に自分のやりたい仕事を見つけることが大切。

この記事が何かの役に立つことを願っています。