【海外勤務】シンガポールのキャリア事情 2(全3回)
前回に引き続き、シンガポールのキャリア事情について続きを書いていきます。当記事はLinkedInと私の個人ブログで公開しているのですが、思いの外DMや公式LINEへの反響があり、驚きました。
日本から海外に出るキャリアの玄関口としてシンガポールを目指す人もいるだろう、くらいの軽い気持ちで取り上げましたが、欧米・オセアニアなどよりも純粋にシンガポールを希望する、という方が想像以上に多いことに気づかれさました。
前回の予定通り、シンガポール転職を果たした人たちの事例、転職先の種類、転職活動のやり方等について書いて参ります。
※前回記事では、シンガポールの給与事情や日本と「どちらの芝生が青い」かについて書きました。ご興味のある方はご覧ください。
【海外勤務】シンガポールのキャリア事情 1
シンガポールへの転職方法
これまで私が見聞きしたシンガポールへの転職方法は大きく分けて3つあります。事例が多い(実現可能性が高い)順にご紹介します。
1. 現地求人への応募
最もシンプルにして、事例数が多いのは、現地求人への直接応募です。私の観測範囲では日本人のシンガポール転職成功例の9割以上がこの方法です。この後に挙げる2つの例との間には成功率の高低に大きな落差があります。
尚、職種にもよりますが、現地転職エージェントを使っての転職は難しい可能性が高いです。シンガポールに限らず、海外転職を希望する人から現地転職エージェントの紹介を頼まれることがよくありますが、現地エージェントから連絡がくるケースは稀です。現地では日本語が必要とされるケースを除き、日本人を採用することが稀なので、日本以上に目先の利益を優先する海外エージェントは、即売上につながる可能性が低い相手との面談に時間を使うことを優先しません。
最も手っ取り早く、成功事例が多いのは、現地企業の求人ページ、求人広告から数を撃つことです。また、自分が興味のあるポジションの担当者を見つけることが難しいものの、現地採用担当への直接の連絡はより効果的です。
2. 海外赴任からの転職
日本から海外赴任でシンガポールへ行き、そのまま転職というケースもあります(前回記事を読んでくださった方からもそうした事例をご紹介いただきました)。
シンガポールに限りませんが、採用は勤務国に既にいる人が優先されるため、現地に住んでいる点がアドバンテージとして働きます。また、シンガポールでの商慣習に通じていたり、コネクションを持っていたり、現地情報が入りやすいという点も、日本にいる人よりも大きく有利です。
一方、現職との赴任先での転職制限に関する取り決めがあることも少なくありません。また、海外勤務パッケージや、子どもの学費、住宅補助などの手厚いサポートがあることから、転職に踏み切るという決意が鈍くなりがちです。
3. シンガポールからリモート勤務をする
最後の事例は転職とは少し違いますが、シンガポールから、日本での仕事(日系企業とは限らない)をするという例もあります。
直近で見た二例は、家族の都合で海外に行く必要があるので退職の相談をしたところ、リモート勤務を認められたという経緯で実現されました。
一人はシンガポール、一人はNY(時差がキツそう…)で、どちらの方も5 – 10年間に渡って活躍してきた実績があるからこその打診だと思います。
ちなみに、前者は日系企業、後者は米系企業です。
転職先の種類
シンガポールへの転職先は主に、外資(欧米などの)、日系現地邦人、シンガポール企業の3つがあります。
前者2つの事例が多く、シンガポール企業に転職する例は稀です。一つずつ見ていきます。
1. シンガポール以外の外資系企業
知っている人も多いと思いますが、外資(主に欧米)のアジア展開はシンガポールを中心として行われることが多いです。
香港もそれに近いポジションだったのですが、近年の状況をみていると、APACヘッドの役割は今後益々シンガポールに偏っていくものと予想されます。
このため、欧米外資の日本オフィスで働いている人、特になんらかの職種で日本国内のヘッドの人(日本の法務ヘッド、人事ヘッド、営業ヘッドなど)は、シンガポールで「一つ上のステージ」を希望するケースが目立ちます。
欧米にある本社とのコミュニケーションとシンガポール現地での実務経験が同時に積むことができ、シンガポール国内でのキャリア形成はもちろん、さらに上の階層である本社に挑戦するとっかかりになることもあります(非常に稀ではある)。また、ポジションによっては、日本オフィスを管理監督したり、協働することもあり、日本に帰国しても比較的キャリアの連続性を保ちやすい選択肢でもあります。
2. 日系現地法人
シンガポールにオフィスを持つ日系企業の現地採用に応募するのもシンガポールへの転職の代表的な選択肢の一つです。
他の選択肢と違って、日本人(日本語ができる。日本の商慣習に詳しい人)であることが内定獲得に有利な場合が多く、募集があれば比較的決まりやすい点が魅力です。
一方、比較的簡単な業務を安く募集しているケースが多かったりと、必ずしも次に繋がる経験を積むことが限りません。応募前に慎重に調査、検討することが重要です。
3. シンガポール企業
他の二件に比べてレアですが、シンガポール企業に転職するというケースもあります。
日本語が優位性にならないことがほとんとで、英語が要求され、北京語の要件も珍しくないことから、一般的な日本人にとっては狭き門です。
※ホテルスタッフなどのホスピタリティ分野は除く。
一方、「海外で」且つ「グローバル本社で」働ける機会は多くなく、キャリア形成に大きなプラスとなる可能性は高いです。
本記事は次回に続きます。
次回は、シンガポールで活躍する方の個別事例と、シンガポールでのキャリアの今後について紹介いたします。