スタートアップ転職が完遂されないのは何故?【スタートアップ募集の考え方】

キャリア 転職

スタートアップに行きたい

ここ数年でよく耳にするようになりました。
将来性、アップサイド、刺激的な仕事、フレキシブルな労働環境、スタートアップは魅力的な言葉と共に語られます。
しかし、「スタートアップに行きたい」と言われた方のその後を追ってみると、意外とスタートアップには行かれていません。多くの方が、ある程度安定した「スタートアップでない」企業に行かれます。

それはなぜでしょうか?
果たして、スタートアップを選ばなかったのは正しい選択なのでしょうか?

  1. なぜスタートアップを選ばなかったのか
  2. 給与
    安定性

  3. スタートアップに行かなかったのは正しい選択か
  4. スタートアップから得られる金銭的利益
    スタートアップ転職では路頭に迷わない

  5. 最後に

なぜスタートアップを選ばなかったのか

前述のようにスタートアップに興味を持ちながら結局行かなかった方々はなぜそのような決断を下したのでしょうか?
主に以下の二点が挙げられます。

給与

一般的にスタートアップは給与が低い傾向にあります。
「会社が不安定な分を普通の会社よりも高い給与で補填してもらいたい」と考える方はそもそもスタートアップで働くことに向いていません。

一方、現金で払えない分をストックオプションでカバーする会社があるのもスタートアップの特徴です。とは言え、ストックオプションによるリターンは、会社のフェーズが初期段階であればあるほど高く、後期(会社に高い評価が付いてきた段階)にいけばいくほど、多くは望めません。要するにハイリスクハイリターンか、ローリスクローリターンの二択で、打算的に考えれば考えるほど、スタートアップへの転職からは足が遠ざかることが多くなります。

余談ですが、会社によっては現金給与とストックオプションの割合を決めることのできるところもあります。
ある程度評価の定まってきたスタートアップだとストックオプション部分の金銭的なうま味は期待できないと書きましたが、こうした制度のある会社であれば、ストックオプションの割合を増やすことで、ある程度の雇用の安定性と、高いリターンの可能性を両得することができます。株価が下がるリスクがあるだろうと言われたらそれまでですが。。。

安定性

スタートアップ企業には雇用の安定性への不安がつきまといます。
特に家族を持たれている方は、いくら自分が行きたくても家族の反対に遭い、スタートアップへの転職を断念せざるを得なくなるケースも散見されます。

しかし、転職業界で働いている者から見ると、スタートアップで倒産したり、自分のポジションが削られて辞めざるを得なくなった例は、外資でクビになるケースよりも少ないくらいです。あまり無責任なことは言えませんが、スタートアップの雇用に対する不安定性は、実態以上にイメージが先行しているという印象は拭えません。

スタートアップに行かなかったのは正しい選択か

これらのスタートアップを選ばなかった方たちは正しい選択をしたのでしょうか?
この問いに一概にどちらと答えることはできませんが、本当はスタートアップに行くべきだったのに選ばなかった方は間違いなくいらっしゃるでしょう。

家のローンの支払いに無理が出たり、ご家族の反対を押し切るのはお勧めできませんが、前述のスタートアップ二大懸念はそのリスクが過大評価されている傾向にあります。

スタートアップから得られる金銭的利益

スタートアップは給与が低い、というのは一般論として間違いありません。
しかし、仕事から得られる金銭的利益とは給与(ストックオプションなど含む)だけでしょうか。

仕事から得られるスキル・経験も後々収入に転化できます。
仕事選びの際には、ついつい目に見える数字の条件だけに目を奪われがちですが、自分自身の価値を根本から上げる要因となる「積むことのできる経験」は、給与に勝るとも劣らない重要性を持っています。

教育を例に取るとわかりやすいでしょう。どれだけ高度な教育を受けたかと、その後の収入にはある程度の正の相関関係があります。通常、教育は金銭を受け取るどころか、むしろ学費を支払う必要があります。しかし、教育を通して得る知識やスキル、経験によって、将来の収入を上げるという間接的な金銭的利得を得られます。(もちろん教育にはものを知る喜びや、人格形成などの金銭には代え難い面があり、そしてそれがむしろ本来の教育の目的だと思います)お金をあげるから受ける教育のレベルを落としてくださいと言われて、話に乗る方は少数でしょう。

仕事でも有用な経験を得るために無給でやるべし、とは思いませんが、給与と獲得可能な経験の有用性のバランスをしっかり考えて意思決定することが満足のいくキャリア形成には肝要です。

スタートアップでの経験者は、採用需要が高い傾向にあるため、若干給与が低い場合も上記を踏まえて考慮されると良いと思います。

スタートアップ転職では路頭に迷わない

スタートアップに転職してすぐに潰れたらどうしよう、という懸念は至極真っ当です。
しかし、スタートアップと一口に言っても、そのフェーズは様々で、ハイリスク・ハイリターンのシード期やアーリー期に参画するのであればともかく、ミドル期以降で、「死の谷」も超えているような段階であれば、失職リスクはかなり抑えられます。(その代わり、ストックオプションなどで得られるリターンも抑えられます)

※日本のスタートアップの企業生存率は、世界的に見てもトップクラスで、実はシード期、アーリー期であっても、スタートアップの廃業リスクはみなさんが思っているほど高くありません。

出典:中小企業のライフサイクル

また、無責任に聞こえるかもしれませんが「雇用の安定性」を考える際に、勤務先企業の安定性に縛られ過ぎてはいけないとも思っています。
身も蓋もない話ですが、会社は潰れる時は潰れます。そこで重要なのは、会社が倒れても自分は倒れない(どこからも引く手数多で、場合によっては自分で暮らしを立てられるスキルを持つ)ことです。

そうした意味では、「安定性は日系大手ほどではないけれど有用な経験が得られる職場」は、「安定性が高いけれど手に職つかない職場」より余程安心が得られると思います。数年前に大量解雇をした某日系超大手企業から放出された方たちがなかなか行く先がなく、転職活動に苦労されたのは記憶に新しいです。同社は入社難易度が高いものの、ある程度以上の年次になると内部調整の仕事が多くなる(つぶしの効かない経験が多くなる)ことが知られていました。新卒で入社した方たちはまさかこんなことになるとは思いもよらなかったでしょう。

このように、現代では一見安定性の高いように見える企業でも何が起こるかわかりません。有事に備えて会社と共倒れにならないように自己研鑽をすることは生き残る上で必須です。

以下の記事でもスタートアップ(ベンチャー)の給与と安定性について言及しています。よろしかったらご参照ください。

ベンチャー企業への転職で知っておきたいこと – 最大の懸念点、給与と安定性

最後に

いかがだったでしょうか。
すっかりスタートアップ採用の回し者みたいになってしまいましたが、私は大手、中小、スタートアップ、独立等どれが一番良いということはないと思っています。青臭いかもしれませんが、キャリア形成において、万人に当てはまる正解はありません。

とは言え、スタートアップの採用募集は不当に低く見られていると感じたことから、スタートアップ転職に対する負のバイアスを払拭したく、この記事を書かせていただきました。

スタートアップにつきまとう懸念は確かにありますが、それは大手も同様です。今回の記事がみなさんの意思決定において少しでも参考になれば幸いです。