知らなければ損をする転職リスクとの向き合い方

キャリア 転職

転職にはリスクがつきものです。
転職先の上司と反りが合わない、仕事内容が思ったものと違う、など様々な失敗の可能性があります。
しかし、キャリアビルディングにおいては、No Risk, No Gainが原則です。
みなさんは転職によるリスクを正しく計測しているでしょうか。

今回は、自分事になると著しく判断力が鈍る転職リスクについてお話ししていきます。

  1. リスクを取らないというリスク
  2. 転職成功によるリターン
  3. 転職リスク計測の注意点
  4. リスク計測に際してのバイアス
    ゼロリスク信仰の罠
    理性的な判断

リスクを取らないというリスク

結論から書くと、大半の方は転職におけるリスクを過大評価することで損をしています。
「リスクを取らないことが最大のリスク」です。これは、転職エージェントとして多くのキャリア例をマクロ視点から見て強く感じることです。

現代は、ビジネスを取り巻く環境が目まぐるしく変化し、終身雇用の考え方が一般的でなくなったことから以前よりも競争が激しくなってきています。そして、そうした環境において停滞は退歩に等しいと言えます。

自分が成長することで相対的にはやっと現状維持といったところで、現状を打破し、キャリアアップするためにはかなりのスピードでの成長が必要です。
そして、これに必要な加速力を得るには、リスクテイキングというガソリンが不可欠になります。

転職成功によるリターン

では、闇雲にリスクを取って転職するのが正解なのでしょうか?

そうではありません。転職というリスクを取り、キャリアアップを目指すには、それに相応しいタイミングと理由が必要です。将来のために他社でしか積めない経験が必要と思った時、現職で希望しているポストが空く様子がない時、他社で大幅な待遇アップが見込める時などに転職をすることがおすすめです。

※転職のタイミングについては、以前の記事をご参照ください。
転職タイミングの考え方【キャリアに求めるものを得るために知っておきたいこと】

転職成功によるリターンの基本は、変化です。上記のように現職にいる限り望めない変化が得られます。
私の見てきた中では、以下のような例があります。

  • 仕事を通じて英語力を伸ばしたいが、現職では使うチャンスがない。
     英語使用に抵抗がなければ就けるポジションへ転職。働きながら英語が上達できる環境へ。
  • 大手投資運用会社で上司(部長)が動かないため、長年No2に甘んじてきた。
     同業他社に転職し、まもなく部長に就任。
  • 大手日系企業の100人近い知財スタッフの一人。小さい歯車の一つであることに違和感。
     大手外資知財部長へ転身。大きな裁量を持って活躍。

ここぞというタイミングと理由による転職は、キャリアにプラスの変化を起こすアクションです。

転職リスク計測の注意点

とは言え、転職により発生するリスクは無視できません。どうやったらリスク計測を正確に行えるのでしょうか。
答えの一端は、冒頭にあります。「大半の方は転職におけるリスクを過大評価する」という部分です。
リスク計測時に発生するバイアスをできるだけ取り払い、ゼロリスクに取り憑かれないようにすることができれば冷静な判断ができるはずです。

リスク計測に際してのバイアス

人間がリスク計測に際して主観的に感じるリスクは、他社から見た客観的リスクに比べて、過大、もしくは過少に評価されがちです。これはリスク認知バイアスの一種で、例
えば以下のような例が挙げられます。

主観的リスクが客観的リスクよりも過大に評価されるケース

・通り魔による被害報道を見て心配する
・飛行機の墜落を恐れる

主観的リスクが客観的リスクよりも過小に評価されるケース

・運転中に携帯電話を操作する
・問題行動のあるパートナーと恋愛関係になる

転職における認知バイアスは、圧倒的に前者の方が多く、「心配しすぎて正しい決断をできない」状態が多く見られます。

ゼロリスク信仰の罠

何かを決断する際には、多少の不確定要素を受け入れなくてはなりません。しかし、多くの方がそれを受け入れられず、機会損失をしています。
転職というものはしてみなければわからないことが多く、新しい環境に飛び込む前にあらかじめ全てを把握することは不可能です。少しでも不確定要素があると、それが前述の認知バイアスにより肥大化し、身動きが取れなくなるという例をよく見ます。
もちろん転職をしないという選択もありますが、転職により何かを実現したい、またそうすべきフェーズにおいては必要なリスクを甘受することが必要です。

また、多くの方が、変化を起こさないこと、すなわち現職に残ることを「ゼロリスク」として扱っていますが、これは間違いです。
現職にいても周りは絶えず変化し、自分自身も年齢を重ねていくため、変化は静かに起こっています。また、この緩慢な変化は、転職などの能動的に起こす変化とは異なり、「起こる変化」です。自分から起こす変化と比べると、コントロールがより難しいリスクと言えます。

理性的な判断

必要なリスクは受け入れるべきと頭ではわかっていてもバイアスから抜け出すのは難しいかと思います。しかし、物事を見る角度を少し変えてみることで理性的な判断を行うことができることがあります。

例えば、「安定性」の考え方です。

「安定した企業に転職したい」という希望を聞くことがよくあります。安定した(絶対安泰の保証はないものの)企業へご紹介すること自体は難しくありません。しかし、安定した企業で働くのが本当に安定につながるのでしょうか。

ここ十数年ほどで見ても、安定していると思われていた企業の倒産や、大量解雇の例は枚挙に遑がありません。
そしてそれらの企業の一部では、簡単な書類仕事や社内でのコネクションの構築など、他社で通用しないスキルしか身につかないケースも見当たります。
もしそのような環境で長期勤務をしていて、倒産やリストラで職を失ったらと思うとゾッとしませんか?

これに対して、仮に会社の安定性は最高とは言えなくても「どこでも通用するスキル」を身につけられるのであれば、キャリアとしての安定性は高いと言えます。

要するに、「会社などの肩書きを全て取っ払ったときに自分にどれだけの市場価値があり、職を失ってもやっていけるかが安定性である」 という考え方です。
勤務先から離れることはあっても、自分自身の経験、スキルとは一生涯の付き合いになります。どうせなら、失わないものを鍛えるのが本当の安定に繋がるのではないでしょうか。

考え方は人それぞれなので、断定はできませんが、このような安定性についての考え方にも一理あると思っています。

このように少し視点を変えてみることで、見えてくるものもあり、それがあなたのリスクの捉え方を変えることもあります。それにはリスクとしっかり向き合うことと色々なキャリア例を見ている第三者と話してみることも有用です。