機会損失をしないためのジョブディスクリプションの読み解き方【知らない方多数】

キャリア 転職

転職活動において要領良く、自分の希望に適った仕事を見つける方と、そうでない方がいます。
両者を分ける要因はいくつかありますが、その内の一つは求人内容の捉え方です。

そこで今回は、転職先の選択において重要なジョブディスクリプション (JD, 求人票とも)の読み方について解説します。

  1. ジョブディスクリプションとは
  2. 内容を間に受けてはいけない
  3. ジョブディスクリプション作成の裏側
  4. 多すぎる作成者
    使い回し
    ダメ元の要件
    マーケットの理解
    ニーズの変容

  5. ジョブディスクリプションの裏を読む

ジョブディスクリプションとは

ジョブディスクリプションとは、企業の求人において、職務内容や募集要件について記載したドキュメントのことを指します。
メンバーシップ型雇用の根付いた日本企業では馴染みがなく、ジョブ型雇用が常識の欧米で一般的なものであったようです。
しかし、日本の採用市場においてもジョブ型雇用が増えてきたのにしたがい、ジョブディスクリプションを作成する企業も多くなりました。
現に私のご紹介するポジションの大多数はジョブディスクリプションの用意があります。

「応募の決断は、ジョブディスクリプションを見てから」という転職者の方は多いですが、正しく読めている方は少ないように感じます。
正しく読めない原因は、真面目に読みすぎているからです。

※日本のジョブ型雇用についてご興味のある方は、こちらの関連記事をご覧ください。

内容を間に受けてはいけない

誤解を生みそうな小見出しですが、自分にとっての「良い仕事」を見つけるための真理です。
ジョブディスクリプションについて最もよくある誤解は、書かれている職務内容、及び募集要件がガチガチに決まったもので、変更されることはないというものです。
法務のジョブディスクリプションなのに内定は営業職だった、というようなことあり得ませんがジョブディスクリプションの記載内容にはある程度の「バッファ」があり、最終的に採用される人材は、ジョブディスクリプションの要件に完全にはマッチしなかったり、アサインされる仕事内容が予定されていたものと若干違う(内定者の適正・志向に合わせた変更であることが多い)ことがあります。
このことから、ジョブディスクリプションに書かれていることを間に受けすぎると思わぬ機会損失に繋がります。

これを理解するには、ジョブディスクリプション作成の背後にあるものを見ていくことが必要です。以下より、その説明に入ります。

ジョブディスクリプション作成の裏側

採用需要に対して、その仕事で求められる仕事内容と、求められる経験や資格を書く「だけ」のジョブディスクリプションですが、なぜその内容と実態に乖離が出ることがあるのでしょうか。
その背景には以下のような理由があります。

多すぎる作成者

Hiring Managerだけでなく、関係の薄いステークホルダーが何人も自分たちの意見を詰め込み、結果として不要な募集要件でいっぱいのジョブディスクリプションが出来上がることがあります。やたら長いジョブディスクリプションを見かけたら、こうした背景の元作成されたジョブディスクリプションかもしれません。

使い回し

ジョブディスクリプションの使い回しもよく見られます。同一ポジションを前回募集した時や、他国の似たポジションを探した時に使ったジョブディスクリプションをそのまま使用したりしています。
当然今回の採用需要に即しておらず、「形だけ」存在する参考にできないジョブディスクリプションです。

ダメ元の要件

ダメ元でいわゆるユニコーン(現実に存在し得ない理想の人材)を探そうとする企業も少なくありません。
念の為理想の条件を書いておいて、それに少しでも近い人が来てくれればという狙いなのですが、高すぎる要件から敬遠され人が集まらないことが多いです。

マーケットの理解

募集要件は生き物です。採用課程において変化していきます。
採用に関わったことのある方であればお分かりになると思いますが、人材不足の日本で「狙った人材」がドンピシャリで応募してくることは稀です。
このことから、採用課程において、どのような人材がタレントマーケットに居て、自社に興味を持ってくれるかを学び、必要に応じて自社ポジションの要件を現実的なものに変更していく必要性が出ます。
こうした要件変更(緩和)は日々行われているため、ジョブディスクリプションにいちいち反映しない、または遅れて反映をするというのが常です。

ニーズの変容

前述の要件変更に似ていますが、そもそもアサインする仕事内容に多少変更を加えることもあります。私の紹介経験から一例を挙げると、法務とコンプライアンスどちらもできる弁護士を投資運用会社の「コンプライアンス部長」ポジションにご紹介したら、最終的に「法務・コンプライアンス部長」の内定が出たことがあります。

上記のいくつかが組み合わさることが多いため、ジョブディスクリプションの内容を過信し過ぎることは、応募するかどうかの判断をする上で賢明ではありません。
いい加減に思われるかもしれませんが、有名人気企業などでもこのようなことが送ることは珍しくないと自信をもって断言できます。

ジョブディスクリプションの裏を読む

では、どのポジションに応募するかを考える際に何を参照すればよいのでしょうか。
答えは、その企業がどんな課題を解決したいかを見極めることです。
これは私が企業から人材紹介を依頼されて探す時に留意していることでもあります。

人を採用するというのは、何らかの課題を解決するためで、その課題の解決策(採用人材像)を落とし込んだものがジョブディスクリプションです。この落とし込みは、翻訳とも言えます。完璧な翻訳がないのと同様に、ジョブディスクリプションに書かれた内容が、採用によって解決しようとしている課題のソリューションとして完璧な精度で記載されているということは考えづらいです。

では、どうすれば「翻訳」前の課題に触れることができるでしょうか。

一つ目に挙げられるのは、ジョブディスクリプションに書かれていることの枝葉末節にとらわれず大局を見ることです。
経験年数や、TOIECなどの点数を気にしすぎて、自分が有力候補になり得るポジションへのチャレンジを躊躇される方がいます。ジョブディスクリプションで求められていることが大方できそうであるのに、経験年数や試験の点数が少し足りないから諦めるというのは非常にもったいないことです。ジョブディスクリプションの記載内容を一つ一つ細かく自分の経験と照らし合わせるよりも、仕事内容や要件全体の印象から自分が貢献できそうか判断するのがお勧めです。
以前、キャリアビルディングには、少しの背伸びが必要と書いたことがありますが、木を見て森を見ないと大切なチャンスを見逃すかもしれません。

次に、転職エージェントなどの第三者アドバイザーの意見を聞くことも有効です。
前述した通り、採用要件や企業のニーズが変化してもジョブディスクリプションが変更されないことは珍しいことではありません。こうした最新の情報をキャッチするには、その企業と直接やりとりをしている人物と話すことが判断の手助けになります。

最後に一番重要なのは、採用企業と面談・面接で話すことです。採用者と直接血の通ったコミュニケーションを取る課程で、先方のニーズに直に触れることができるに留まらず、あなたの経験やスキルを知ってもらうことで、先方のニーズの掘り起こしができ、よりあなたの志向にあった仕事内容に変更、アサインされるかもしれません。