なぜ新卒採用勝ち組企業は中途採用で負け続けるのか

採用

採用には2つの種類があります。
新卒採用と中途採用です。

意外に思う人もいるかもしれませんが、新卒採用に強い企業は、中途採用が上手くいっていないケースが非常に多く見られます。主に日系大手企業です。

一昔前までは、それで問題ありませんでした。しかし、今は日系大手ですら中途採用は避けて通れません。新卒で確保するのが難しい専門性の高い人材の確保はもちろん、新卒で良い人材を採用しても優秀な人材ほど転職してしまいます。

当記事では、なぜ新卒採用では勝ち組のはずの企業が、中途採用では苦戦をしているのか見ていきます。

  1. 新卒採用と中途採用
  2. 中途採用が上手くいなかい理由
  3. 成功体験に縛られている
    危機感を持てない
    減点方式を用いてしまう
    待遇が悪い
    受け身になっている
    効果的に自社売り込みができていない
    選考プロセスが遅い

新卒採用と中途採用

一口に採用と言っても、新卒と中途採用ではまったくの別物です。
候補者になりうる人数、評価軸、人の集め、その他作法など、違いを挙げていったらキリがありません。

その中でも、採用活動をする上で理解すべき一番顕著な違いは、候補者の意識です。新卒採用では、将来に対してふんわりとしたイメージしか持っていない人が多く、大手企業であるという安心感を与えることだけでも、内定受諾の可能性は高騰します。
一方、中途採用の候補者は、もっとリアルに自分の今後を見ており、将来の展望を考えるときのタイムスパンも新卒のそれと比べ、短めです。

要するに、中途採用では「候補者が、具体的且つ短期的に得られるメリット」の提示が必要となります。

中途採用が上手くいなかい理由

では、新卒採用勝ち組企業が中途採用を思うようにできていない具体的な理由を見ていきましょう。

成功体験に縛られている

新卒採用が上手くいっている企業は、その成功体験に縛られ、まったく同じノウハウを中途採用にも用いる傾向があります。

しかし、それでは上手くきません。

まずは、新卒と中途採用は、それぞれ似て非なる活動であるという認識を持ちましょう。
意識改革することが最初の一歩です。

危機感を持てない

冒頭でも書いているように、新卒採用に強い会社の大部分は日系大企業です。日系大企業は、中小企業や外資に比べると人手に余裕がある傾向があります。また、メンバーシップ型で職種を超えての社内異動に対しての抵抗もなく、整備も整っているため、中途採用ができなくても「いざとなれば別部署から異動させよう」という考えがちらつき、中途採用に100%腰を据え切れていない例も散見されます。

中途採用は、競合も多く、厳しいマーケットです。背水の陣でフルコミットしないとなかなか上手くいきません。

減点方式を用いてしまう

新卒採用のノウハウをそのまま中途採用に流用している会社は、学歴や転職回数を気にしすぎて、良人材を逃す傾向があります。

新卒の場合は、即戦力を期待せず、育てることを重視しするケースが多いため、学歴フィルターをかけても候補者数が確保できます。また、当然転職回数はゼロです。

一方、中途人材は人によってそれなりの回数転職をしていたり、有名校出身でなくてもキャリアを切り開いて現在は力をつけている人も少なくありません。

中途採用は通常新卒採用に比べてより「緊急性が高く具体的な必要性」にかられて採用します。要するに特定分野の即戦力が必要なのです。

転職回数が自社基準よりも少し多かったり、学歴が会社の基準に合わなかったりしても、技能・経験のニーズが合えば「実を取る」べきなのが、中途採用です。減点方式を止めないと、母数の少ない中途採用マーケットでは、本当に必要なスキルを持った人材を確保することは困難です。

待遇が悪い

スキル・経験を持った中途人材は、外資と取り合いになります。このため、ほとんどの日系企業が用意する待遇(特に給与)では、歯が立ちません。

目に見える数字が人の心に及ぼす影響は非常に大きく、当初日系企業を希望していた人でも、あまりにも条件に差のある内定をもらうと、外資に傾くことが多々あります。

また、最近では中途採用に力を入れ、報酬水準を変える日系企業も出てきたため、条件が見劣りする企業はなおさら悪目立ちするようになってきました。

外資に対抗できる報酬水準で中途採用市場を戦っている日系企業は、ジョブ型雇用枠の給与設定、契約社員採用にして自社給与テーブルの縛りから抜ける(これはデメリットもあり)等、三者三様の工夫をされています。詳しく知りたい方は、ご連絡ください。事例をご紹介させていただきます。

受け身になっている

中途採用に強い企業は人材を「採りに行く」のに対し、中途に弱い企業は「待っている」傾向があります。

「そんなことはない、色々な媒体を利用して声を掛けている」という声もあるかと思いますが、媒体上で目ぼしい候補者にただ声を掛けていくだけでは、あまりにも受け身過ぎます。

媒体上での声掛け一つとっても、以下のような点は要注意です。
・どの候補者にもテンプレートのメッセージを送っていないでしょうか?
・メッセージにはCTA(Call to Action)は入っているでしょうか?
・会社ホームページを貼るだけで自社紹介したつもりになっていないでしょうか?
・メッセージを一度送ったきりになっていないでしょうか?

「採りに行く」企業は、多様な取り組みをしています。
例えば、
・媒体上で声を掛けるにしてもメッセージに工夫を凝らし、個々の候補者に合わせる。
・声を掛けた時点で、面談を確約して、候補者との接点を増やす。
・返信がない候補者には文面を変えて、しつこくならいない程度にリマインダーを送る。
・転職エージェントを利用する。
・特定採用ポジション用に会社説明会を開き、その集客もおざなりにしない。等。

中途採用で勝つには、良い人材を狙うハンターになることが肝要です。

効果的に自社売り込みができていない

例え有名企業だとしても、自社の売り込みは必須です。
ですが、実際は企業の名前や事業規模に頼って、個々の候補者のニーズに合致した売り込みをできていないのが現実です。

冒頭でも述べたように、中途人材は、新卒人材に比べて、自分の求めるものを具体化しています。加えて、ニーズの多様化も進んでいます。

新卒であれば、過半数は大企業、名前を知っている企業という時点で、エントリーシートくらいは書きます。あと最近ではベンチャー志望者が増えたくらいでしょうか。言葉は悪いですが、ニーズは比較的画一的です。

一方、中途人材はそうではありません。
つまり、中途採用では、自社売り込みもより個々のペルソナに合わせる必要があるのです。

選考プロセスが遅い

新卒同様、中途採用の候補者も複数者並行して面接を受けていることが多いです。しかし、新卒採用よりも各社での選考プロセスのスピードに違いがあります。

中途採用の上手い会社は、良い人材がいたら、サッとプロセスを進めて(場合によってはショートカットまでして)内定を出し、口説き落としてしまいます。

一方、中途採用が苦手な会社は、以下のようなケースが散見されます。
・良い人材が見つかったけど、もっと良い人が見つからないか待つ。
・違うタイミングで選考に乗った候補者の面接タイミングを合わすために、先に進んでいた候補者を待たす。
・自社面接官の都合でリスケを繰り返す。等。

選考が遅いと、他社に取られるリスクが高まるだけでなく、候補者が「自分に興味がないのではないか」と考えることにつながります。

中途採用において、スピードは想像以上に大切です。

いかがでしたでしょうか?
実はこのような記事を書くまでもなく「新卒に強く、中途に弱い」企業の中にも、中途採用の戦い方を完璧に理解されている人は驚くほど多いのです。

「変えられない」原因は、知識よりも意識、そして企業の構造にあると感じます。
大企業だと、やり方を変えるにも一朝一夕ではいかないのが普通です。

しかし、現場の方がしっかりと問題意識を持ち、意思決定の権限を持つ層に草の根活動的に働きかけることによって小さい変化を起こし、その風穴が大きな変化を誘発することも不可能ではないと思います。
当記事がそのきっかけ、または材料になればこれほど嬉しいことはありません。