アセマネコンプライアンス採用トレンドと、後継者問題
今回は、アセットマネジメント(投資運用会社)のコンプライアンスポジションの最新採用トレンドと後継者問題について解説いたします。
既にアセマネコンプライアンスをやられている方、アセマネコンプライアンスへキャリアチェンジされたい方、アセマネコンプライアンス人材を探している方向けのかなりニッチな記事です。
アセマネコンプライアンスの採用トレンド
2022年末から2023年3月現在にかけて、アセマネコンプライアンス採用は過去10年間でも異彩を放っています。その理由は、募集ポジションの職位です。以前別記事でもご紹介したように、日本におけるアセマネコンプライアンスポジションは上位職位の方が数が多いという特徴があります。(詳細は、アセマネコンプライアンス逆ピラミッドの職位構成参照)
私は、過去多くの外資アセマネコンプライアンスポジションの採用をお手伝いしてきましたが、そのほとんどがコンプライアンス部長ポジションでした。それが直近数ヶ月は、「部長でないポジション」の採用サポートが大多数になっています。
若手採用が増えた理由
理由は2つあります。コンプライアンス意識の高い会社が増えたこと、そして、日本に進出する運用会社が増えてきたことです。
理由1 コンプライアンス意識の向上
多くのアセマネ企業で、コンプライアンスは「置かないといけないから置く」という後ろ向きな対象から、「安心してビジネスをしていくには必要な存在」という前向きな印象に変わってきています。
これを背景に、最低限の人数から、少し余裕を持ったヘッドカウントでチームを作ろうとする会社が出てきました。
※少し余裕を持ってというところがポイントです。大量採用は大量解雇に繋がります。
理由2 進出企業の増加
アセマネにとって日本はおいしいマーケットです。理由1にも繋がりますが、日本が「資金の逃げ場」として安牌であることや、世界最大の年金基金があることなどを理由に、多くの大小の外資アセマネが参入を画策しています。2020年初頭辺りにコロナが理由で計画が頓挫した会社が多くありましたが、段々と参入計画を再開始する会社が増えてきました。
この事態をどう捉える?
では、若手(といっても部長職がマジョリティであるアセマネコンプライアンスでの若手は、20代後半から40代後半くらいまでが含まれ、年収ベースで言えば700 – 2,000万円くらいのレンジ)採用が増えたことをどのように捉えることで、我々のキャリアにポジティブなインパクトを起こすことができるでしょうか。
「既にアセマネコンプライアンス職に就いている若手の方」と「アセマネコンプライアンスポジションに転向可能な方」向けに解説します。
既にアセマネコンプライアンスの若手
既にアセマネコンプライアンスで活躍されている若手(部長でない)の方。あなたは非常に希少で、貴重な人材です。後述しますが、アセマネコンプライアンス界は、深刻な世代交代問題を抱えています。現在の部長の方々が引退した時にバトンを受け取る新世代は、非常に少なく、あなたはその一人だからです。
選択を間違わず、キャリアビルディングしていけば、素晴らしい未来が待っていますが、気をつけなければならないのは、転職への誘惑です。
これまで説明してきた通り、今はあなたに当てはまるコンプライアンス採用が非常に多くなってきており、たくさんのエージェントから転職を勧められていると思います。しかし、その転職はあなたのキャリアにどれほどの意味のあるものでしょうか?転職によって得るものは、100 – 200万円の年収アップだけではないでしょうか?
せっかく今非常に良い位置につけているので、転職をする際は、自身のキャリアを大局的に見て、意味のある転職をしていただければと思います。
参照記事
転職タイミングの考え方
アセマネコンプライアンスポジションに転向可能な方
アセマネコンプラマフィアと呼ばれるほど、外から入りにくい世界ですが、稀に未経験から入ることのできるポジションがオープンします。そして、今はそうした募集の多いタイミングです。
どういう方がアセマネコンプライアンス職の有力候補になるかというと、「アセマネの業界経験があるが、コンプライアンスでない方(オペレーションなど)」か、「アセマネ以外の金融コンプライアンスの方」の2パターンが考えられます。どちらを優先するかは、採用企業によって異なりますが、肌感だと前者を好む企業が多いように感じます。アセマネ以外の金融コンプライアンスの方は、あまりシニアレベルになるとアセマネコンプライアンスへの転身は難しく、証券で言えばAVPくらいがギリギリと考えると良いでしょう。
アセマネコンプライアンスが万人にとっての正解とは言いませんが、後で入ることは難しいため、早い内に検討し、カジュアル面談などを受け、真剣に検討することをお勧めします。
後継者問題
上でご紹介した過去の記事、アセマネコンプライアンス逆ピラミッドの職位構成でもありますように、日本のアセマネコンプライアンスは、スタッフレベルよりも部長レベルの方が多く存在するという他業界から見たら異常な状況です。多くの会社では若手を育てる土壌がないため、「経験者」は50代中盤以降のシニアレベルが中心で、この層が引退したあとの、後継者探しが懸念されています。
後継者案は、運用会社以外の金融コンプライアンスや、アセマネをクライアントに持つコンサルだったりとありますが、即戦力を求められ、且つ金融庁、又は関東財務局に登録することになる一人コンプライアンスや、少人数のチームでの採用と考えるといずれも決め手に欠けている状況です。
こうした背景から、今のうちに入っておくと今後のキャリアアップがしやすい領域です。
まとめ
金融の中でもイメージがつきにくい方の多いアセットマネジメントのコンプライアンス職についての記事でした。情報が少ない反面、魅力の多い分野です。
過去に類を見ないほど若手(部長職以外)の採用が増えたり、後継者問題のタイムリミットが迫ってきたりと、今後も目が離せません。
一度入ったら、これ以上にキャリアアップがしやすい領域はないので、もしご興味がある方は、今が好機と思います。