円滑な退職方法 – 退職は転職活動の意外な山場

転職

転職活動の最大の山場は退職手続き

こう言っても過言ではありません。
特に人材不足で採用が困難な今、退職は内定を獲得する以上に難しいことがあります。

このため、多くの転職をお手伝いしている私はたくさんの困難な退職ケースに遭遇しており、退職のプロとも言えます。
今回は、そんな私が円滑な退職ができるよう予め知っておきたい事柄をご紹介します。

退職において最も重要なこと

退職において最も重要なのは、強い意思です。
ほとんどの会社では即日退職者の穴埋めをすることは無理で、会社は退職をしようとするあなたを必死で引き止めます。仮に会社が退職を認めたとしても、退職日を希望よりも先にされ、転職先企業とのトラブルに発展するケースもあります。

この問題は通常“絶対に退職をする”という強い意思一つで解決できますが、いざ激しい引き止めにあうと、意思を貫き通すのが難しい精神状態になります。

そこで今回は、退職の流れ、退職引き止めの種類、最後の手段について解説し、円滑な退職に必要な知識面、精神面のサポートしたいと思います。

退職の流れ

まずは退職の一般的な流れについてです。

1. 退職の意思を伝える

はじめの一歩は、退職意思を伝えることです。以下に説明していきます。

退職意思の伝え方

退職意思を伝える順番は一般的には、直属の上司→人事担当の順ですが、ある程度会社の慣例に従うと角が立ちません。もちろん退職理由が上司との関係性であったりする場合は、最初から人事担当に話しましょう。
最近は必須ではありませんが、退職意思を伝えたあとで日を改めて退職願も持参するとより丁寧です。現職の上司、同僚ともビジネスでの付き合いが続くことは多いので、印象よく辞めるに越したことはないです。
また、退職を申し出た日について後から揉めないように、当日中にメールでも記録を残しておくことをお勧めします。後述しますが、退職の引き止めは、辞めないようにする引き止めだけでなく、退職日を先延ばしにするタイプの引き止めもあります。退職日は退職意思を示した日から起算されるため、いつ退職を伝えたかはっきりとさせておくことが重要です。

退職意思を伝えるタイミング

退職を伝えるのは早ければ早いに越したことはありません。転職先企業はあなたにできるだけ早く入社してほしいと思っているのが普通で、現職の引き継ぎ、可能な範囲の有給消化などを考えると、一日でも早く退職意思を伝えるのがセオリーです。
もし現職の職場環境が悪く、退職を伝え辛い場合は、休日の直前などに話すようにすると少しは気が楽かもしれません。ただしその場合も直近の休日前にして少しでも早く退職意思を伝えた記録を残しましょう。
また、会社によってはボーナス支払い前に退職を伝えると、減額されたり支払われなかったりすることがあります。よって、ボーナス支給日直前の場合は数日待つのが得策ですが、支払いが先である場合は、いさぎよく諦めることをお勧めします。ボーナス額にもよりますが、目先の現金で長期のキャリアプランを犠牲にするのは賢明ではありません。

以下は、退職を伝える際のNG事項です。

同僚にフライングで伝える

会社に正式な退職意思を伝える前に同僚に話してしまうと、意図せぬ形で会社に情報が入り、綺麗な辞め方ができなくなるかもしれません。
相談したいのであれば、本当に信頼のできる極一部の人にとどめておくことをお勧めします。

内定前に退職を伝える

内定前に退職の話をするのはお勧めできません。内々定であったとしても最後に覆る可能性はいくらでもあります。また、予定通り内定は出ても、望んでいた条件でない可能性も大いにあります。
退職願を撤回し、会社に残るのは不都合が多いですし、かと言って仕事が決まっていない状態で退職すると次の職を探す難易度が上がったり、条件交渉で不利になります。

転職先社名を出す

よくやりがちなミスですが、新しい会社に入るまで転職先社名を話してはいけません。大抵、現職に退職の話をするときにどこに転職するのか聞かれますが、ここで話してしまうと現職から転職先にクレームが入ったり、あることないこと言われたり、思わぬ事態を巻き起こすことがあります。そんなことをする会社は稀ですが、無用なリスクを負う必要はないでしょう。
また、転職先としても自社の採用活動の詳細はビジネス上のコンフィデンシャル情報のため、必要以上の人に伝わってしまうことを歓迎しません。

上司によっては、あの手この手でなんとか聞き出そうとするとかもしれませんが、なんとか持ち堪えてください。

次のステップは退職日の決定です。

2. 退職日を決める

退職の意を伝えたら、退職日についての合意も取りましょう。この際に最終出社日も決めて有給消化と引き継ぎのスケジュールも立てることをお勧めします。

念のため、この記事での言葉の定義をします。
退職日 = 会社に在籍する最終日。出勤しているかどうかは問わない。
最終勤務日 = 実際に勤務する最後の日。

いつに退職日を設定するか

結論から言うと1ヶ月がお勧めです。
国を跨ぐ転職や、非常にシニアなポジションにいる方を除いて転職先企業は1 – 1.5ヶ月以内の入社を求めるところが多いです。
会社の規定で退職通知期間(Notice Period)が3ヶ月、というところもありますがそれに従っていたら転職先は非常に限られます。

民法627条では退職日の2週間前に伝えればよいとあるので、それで押し切ってもいいですが、1ヶ月ほど時間を取れば十分な誠意も見せたことになり、本記事のタイトルにもある円滑な退職の目的には適うでしょう。

退職日を決めたらすぐに最終勤務日も決めるべきです。
上述の通り、最終勤務日は実際に勤務する最後の日で、退職意思を伝えた日と退職日の間に設定します。引き継ぎに掛かる時間と有給消化のバランスを考えて設定しましょう。

退職までのスケジュール設定イメージ
退職意思を伝える → 最終勤務日 (有給消化など) → 退職日

退職日交渉のコツ

会社はあなたの退職日をなるべく先延ばしにしようとするケースがほとんどです。
このため、退職日交渉では退職日までの期間を本来最大限譲ることのできる期間よりも短めに言い、最後の手段として少しだけ譲歩できる余地を持つことが重要です。

例えば、1ヶ月と2週間後に退職日を設定したいとすれば、退職日は今から1ヶ月後に退職希望であることを伝え、2週間のバッファは、会社からの退職日引き延ばしがどうしても断りきれない場合に、一度限りの譲歩に使います。ただし、その譲歩をするまでは、2週間のバッファに頼らず、1ヶ月後の退職に向けてできることを全てやります。もし結果1ヶ月後の退職を会社が許可した場合、転職先企業に入社日を早めてもらえばいいですし(多くの企業は早く入社する分には問題ありません)もしどうしても1ヶ月後で許可をもらえない場合は、1〜2週間退職日を先送りにすることを条件に現職と交渉できます。その際は、譲歩は一回切りであることを明確にし、それと引き換えに退職許可をメールなどの記録に残る形でもらいましょう。

退職日を今日から1ヶ月後で希望を出したら、90%以上の会社でもっと長い期間在籍するように言われます。
よくある理由は、後任を探す時間が必要、です。

まず第一に後任を探すまで退職をしないで勤務をするのはあなたの責任範囲から逸脱します。誰かに退職されても困らないようにするのは会社の責任です。
そして、そもそも後任を探すのには通常数ヶ月を擁します。(私は人材を紹介するのが仕事なので自信を持って言えます)数ヶ月も入社を待ってくれる企業は皆無なので、後任が見つかるまで待つことに同意することは、転職先企業からの内定を諦めることとほぼ同義です。
他の理由を用いた退職時期の引き延ばしも本質は同様です。
強い意思を持って自分の希望を貫き通しましょう。

3. 引き継ぎをする

会社からの慰留に必要以上に耳を貸し、自分の将来を犠牲にする必要はありませんが、退職時は最低限迷惑を掛けないようにしたいです。
そこで、引き継ぎが重要になります。

職種によって引き継ぎのやり方が少し異なりますが、どの職種でも当てはまるのが引き継ぎ資料の作成です。引き継ぎ資料はできればまだ退職の意志がない日頃からマニュアルとして少しずつ作成していくと退職直前で慌てないで済みます。また、日々の引き継ぎ資料作成には、嬉しい副産物もあります。それは、業務の簡略化です。引き継ぎ資料を作成すると業務が整理され、簡略化ポイントが見えてきます。退職をするしないに関わらず、こうしたメリットは歓迎するべきことです。

人材採用には時間が掛かるので、あなたの後任が入社してOJTで引き継ぎをしてから退職、というようなことはなかなか起こりません。そこで、あなたの上司、同僚などに引き継ぎをすることになります。この時前述の引き継ぎ資料が完成していると楽です。数週間の猶予で完璧な引き継ぎをすることは不可能ということを最初から認め、重要なことだけ最低限のつもりで引き継ぎすると、最重要事項から着手することになるので、下手に完璧を目指すよりも良い結果になります。

引き継ぎが終わったら可能な範囲で有給消化しましょう。

4. 挨拶と最後の事務手続き

退職日前の2 – 3日はお世話になった人への挨拶、私物の整理、貸与品の返却(入館カード、鍵など)、必要書類の受け取り(年金手帳などあれば)などをしましょう。

返却、受け取りは人事からの指示があるため、忘れることは考えづらいですが、私物の持ち帰りと挨拶は忘れないように気を付けましょう。
現職でお世話になった人たちは、今後もお付き合いのある可能性が高いです。転職をする人が増えてきているので、また同じ会社で働くこともあるかもしれません。

次に退職の引き止めについてです。

退職引き止めの種類

人手不足の日本では、退職の引き止めの激しさが増しています。
退職する意思を強く持っていれば大丈夫と言っても、心の準備をしておかないとスムーズに退職することが困難になり、折角の内定も諦めなければならなくなるかもしれません。

以下によくある引き止めのパターンについて見ていきます。

罪悪感に訴える

最初の退職引き止めは、罪悪感に訴えるパターンです。


「今まで目をかけてやったのに」
「急に辞められたら会社が大迷惑だ」
「仲の良い同僚が困ることになる」

一般的な引き止めの文句です。
「良い人」ほど術中にはまるので、強い意思で振り切る必要があります。
あなたが「明日から来ません」と言ったら非常識だと思いますが、前述の通り1ヶ月ほど掛けて辞めるのであれば、十分に誠意を見せています。ドライに聞こえるかもしれませんが、あなたがそれ以上残って(内定をリスクにさらしてまで)協力することを求めるのは行き過ぎです。

恐怖感に訴える

次に、恐怖感に訴えるパターンです。多くの引き止めパターンは上記の罪悪感に訴えるパターンと、この恐怖感に訴えるパターンの混合です。


「こんな辞め方したら業界での評判が悪くなるぞ」
「同僚にしわ寄せがいって恨まれるよ」
「会社の規定よりも短い期間で退職すると訴えるよ」

表現の過激さに違いはあれど、このようなことを言われることが多いようです。横領したりして辞めるならともかく、退職通知から1ヶ月ほど在籍したのち退職するのであれば、正当な手続きを踏んでいますし、業界での評判が悪くなりようがありません。辞められた腹いせに悪い噂を流そうとしても、個人で人の評判を落とすことは非常に難しいです。業界の中で本当に評判が悪い方は異口同音にネガティブなことを言われている方達で、1ヶ月で退職どころかもっと無茶をやったとしてもそうそう評判は落とせるものではありません。

また、退職を伝えてから1ヶ月もいるのだから、同僚にしわ寄せがいくとしたら会社の人材配置と仕事の振り方に問題があるだけであなたが気にすることではありません。同僚もお互い様なのでわかってくれるはずです。もしわかってくれなかったらこれ以上つきあっても仕方がないと思います。もちろん同僚と自分が逆の立場の場合は、ちゃんと受け入れてあげてください。

訴訟を起こすというのも稀に聞く脅し文句ですが、起こしてもまず勝ち目はないのであり得ません。
他にも違う言い方をされる場合もありますが、基本姿勢は前述の罪悪感に訴えると同様に、言われたことに影響されず、初志貫徹することです。

欲求に訴える

最後に、欲求に訴えるパターン、いわゆるカウンターオファーです。
昇給、昇進、その他なんらかの便宜(労働時間の改善など)を図るなどを条件に退職の引き止めをされるケースがあります。こうしたカウンターオファーを受けた場合、結局短期間で退職するというデータがあり、オファーの受諾はお勧めできません。
昇給や、昇進は将来の前借りで、結局得な条件ではなかったり、労働時間の改善などは一時的で、ほとぼりが冷めたら元の木阿弥、ということがよくあります。また、退職意思を示した時点で会社はあなたを以前と同じ目では見ないでしょう。退職希望者の引き止めが成功していながら後任を探し始める会社もあります。

また、もしカウンターオファーが本当に好条件で、昇給なども前借りではなく純粋なアップだとしても、今まで安く買い叩かれていたという遺恨が残らないでしょうか?本来の自分の評価に基づいた扱いを(場合によっては)長年されてこなかったいう気持ちの悪さと、機会損失は大きく、そうした雇用主の元で働き続けることには自分にとって正しいことなのかという疑問が残ります。

引き止めが振り切れない時、退職を伝えるのが怖い時


引き止めが激しく、退職願を受理してくれない
引き止めで脅迫まがいのことを言われて身の危険を感じている
退職を申し出たら何をされるかわからなく怖い

こうした場合は最後の手段として退職代行サービスを利用しましょう。
使われた人で不満があったという話は聞きません。
相場は25,000 – 30,000万円くらいです。

いくつかリンクをご紹介します。

退職代行Jobs

辞めるんです

まとめ

  1. 退職は想像以上に難しく、転職活動最大の難所になりうる。
  2. 退職には引き止めがつきもので、強い意思を持ってことにあたる必要がある。
  3. 退職を考えていない内からいつか辞める日を意識して引き継ぎ計画を立てると、日々業務の簡略化にも繋がる。
  4. 退職で脅迫を受けたりしたら退職代行を利用するものあり。

みなさんがスムーズに退職手続きをして、新天地で活躍されることを願っています。