【転職活動のお供に】転職エージェントの考える応募会社の情報の集め方

キャリア 転職

転職先の会社について佐野さん(私)だったらどこから情報を集めますか?

転職の相談を受けている方からの質問です。深い質問だと思いました。無限に近い情報ソースのある今、情報を得ることは簡単ですが、取捨選択は困難です。

意外と今までにあまり受けたことのない質問ですが、多くの方が「ネットに決まっている。あとはいればその会社で働いている知人」と考え、わざわざエージェントに聞かないのではないかと妄想し、勝手に需要があるものと思い記事を書くに至りました。知りたい方がいらっしゃらなかったら申し訳ないですが、ニッチなニーズだけでも満たせれば本望です。

そんなこんなで、今回は転職先についての情報の集め方とそれぞれのプロコンについてご紹介いたします。

  1. 情報の集め方 ≒ 転職満足度
  2. 過ぎたるは及ばざるが如し
  3. 情報の集め方とそのプロコン
  4. ネット検索
    友人、知人
    クチコミサイト
    転職エージェント
    カジュアル面談・面接
    書籍

  5. 正しい情報なんてない

情報の集め方 ≒ 転職満足度

日本人の転職者は真面目な方が多く、転職先として検討している会社の情報を驚くほど広く集めます。それにもかかわらず転職の成功率(転職後の満足度)は他国の方と比べて高いとは言えません。日本人が満足度を感じにくいという議論もあるでしょう。しかし、実際に転職をお手伝いしてきた身からすると、とてもそれだけが理由とは思えません。

おそらく、我々に必要なのは、ある種の適当さ(ニュートラルな意味での)からくる要領の良さです。そしてその要領の良さの一部は、情報処理のやり方が関係しています。

過ぎたるは及ばざるが如し

転職先の情報を集める際、我々が陥りがちな失敗の最たるものは、「調べれば調べるほど正しい判断ができる」という誤謬です。これはロジックとしては正しいですが、人間である以上処理能力に限界がありますし、情報にかかっているバイアスにも影響されます。

そして、なによりも時間が掛かります。転職活動を一発必中。「本当に自分に合うもの」だけに応募して、内定を勝ち取る。ということを夢見る方は多いですが、実際は正しい的に弾を当てるには、ある程度数を撃つことも必要です。そして、転職活動のための情報取得の肝は、この数打つ鉄砲を「下手な鉄砲」から「そこそこの鉄砲」に進化させることです。「最高の鉄砲」は想像の世界の産物なので、現実に得られうる「そこそこの鉄砲」を目指す、そして物怖じせずにある程度の数を撃つ気軽さ、これが多くの転職者の方とその後を見てきてたどり着いた私なりの転職成功のためのレシピです。

情報の集め方とそのプロコン

さて、早速情報の集め方の種類について見ていきましょう。

ネット検索

ほとんどの方がはじめにネット検索の上位結果を見るのではないでしょうか? そこには多くの場合、会社HP、SNS、Youtube、Wikipedia、ニュースなどが含まれます。

ネット検索の上位結果を見ることのメリットは、短時間で企業の外郭を捉えられることです。転職活動ではたくさんの企業を検討するため、ネット検索は最初に手を出すべきです。一方、ネットの上位結果は、表層的なところしか見れないことと、「企業が出したい情報」に偏りがちなことがデメリットとして挙げられます。

友人、知人

転職を検討している会社に運良く知人がいた場合は、彼ら彼女らからも情報を得ることができます。利害関係がないため(そこまで親しくない人且つ報酬の出る社員紹介だと当てはまりませんが)会社の良いところも悪いところも中立な意見を聞けるのがメリットです。

ただし、同じ会社でも部署によって環境が大きく異なります。また、あなたの知人がたまたま優遇/冷遇されているということもあるので、直接の知り合いの意見だからといって必ずしもあなたにもそのまま当てはまるものではないというデメリットもあります。

クチコミサイト

Glassdoor、転職会議、Openworkなど、実際にその企業で勤務している/していたことのある人が投稿しているクチコミサイトでも情報収集が可能です。

これらサイトのメリットは転職を検討している会社に知人がいなくても、「中の人の声」を知ることのできる点と複数の人の声を聞くことができる点です。

一方、クチコミサイトは危険も孕んでいます。一番大きなデメリットは、クチコミサイトへの投稿者は、会社に不満のある人が多いことです。残念ながら人のネガティブなエネルギーは概してポジティブなそれよりも強いため、会社に満足してない、恨みがある人は、復讐心を持ってコメントを投稿しがちです。対して会社に満足している人で、わざわざ投稿のためにクチコミサイトに出向く人は多くありません。

加えて、情報の信頼性にも疑問符が付きます。実際に私の知るある会社では、サクラを使って評価を高めています。

これらの点に気をつけ、「参考」レベルにとどめて利用されることをオススメします。

転職エージェント

転職エージェントも情報ソースとして有用となり得ます。

紹介先企業はもちろんのこと、転職支援を通してさまざまな会社の方とお付き合いがあるため、他のソースから得られない情報を持っている場合もあることがメリットです。また、優秀な人であれば、どこの企業を選ぶかであなたの中長期的なキャリアにどのようなインパクトがあるかをアドバイスすることもできます。これは他の情報ソースでは期待し難い強みです。

しかし、デメリットは信頼性です。仮に有用な情報を持っていたとしても、自分の売り上げにつなげるためにそれらを捻じ曲げていたら元も子もありません。また、中には悪意のない嘘をつく、本当にわかっていないエージェントもいます。

信頼のできるエージェントを見つけることが肝要です。

カジュアル面談・面接

見落とされがちですが、カジュアル面談や面接を通して企業から直接情報を取得することは非常に重要です。

「熟考の上、応募すべき」
響きはいいですが、果たしてそうでしょうか?応募前にも考慮は必要ですが、実際にその企業と話さずして「熟考」に必要な判断材料が得られるとは思えません。

カジュアル面談や面接で企業と話すメリットは、その企業について「中の人」から話を聞ける、質問できる、ということもありますが、最も重要なのはなんといっても、実際に自分が一緒に働くことになるかもしれない人たちとの相性を測れることです。なんといっても最後は人と人との関係性なので、このメリットは計り知れません。

デメリットは、時間が掛かること(面談設定、実際の面談など)だけです。重要な決断を下すにあたり、投資すべき時間だと私は思います。

書籍

最後に書籍です。何か他になかったっけ? と考えて、無理矢理捻り出しました。正直なところ、私自身書籍を転職の情報ソースとして使ったことはありませんし、オススメしたこともありません。あまりにもタイパが悪いので…

しかし、この記事を読んでくださっている方は私のようなものぐさばかりではないと思うので、念の為、メリットとデメリットをご紹介いたします。

メリットはなんといっても得られる情報の深さです。過去に特定の企業について書かれた書籍を(転職とは関係なく)読んだことが何度かありますが、当然ながらそこらへんのネットの情報とは精緻さが違いました。もし時間に余裕があるのであれば、判断の一助になるでしょう。

デメリットは、既に書いたように読むのに時間がかかることです。転職を検討している企業すべてについての書籍を読む時間を持つのは多くの方にとって非現実的でしょう。加えて購入資金も掛かります。

また、個人的に危険だと思うのは「投資回収の心理」です。本を一冊読むに掛けた時間とお金に正当性を持たせるために、得た情報の有用性を実際以上に高く評価する心理が働き、判断を曇らせることが起こり得ると思います。

これらの理由で、個人的には書籍は転職活動時の利用よりは、普段からの業界研究などに利用する方が良いと考えます。

正しい情報なんてない

転職先について6つの情報の集め方についてご紹介いたしました。それぞれのメリット・デメリットをご理解いただく一助になれば幸いです。

ここまで読んでいただいた方はおわかりかと思いますが、完璧な情報ソースは存在しません。どこから集めた情報もそれぞれ真実が反映されていなかったり、バイアスが掛かっていたり、時間の経過とともに変化したりします。

完全無欠の無条件に信頼し切れる「正しい情報」なんてものは存在しません。そこを割り切って、混乱しない程度の量の情報を多角的に取得し、あなた自身の中で立体的なイメージを組み立てる。その過程を経て作り上げられた像が最も信頼すべき情報です。

あなただけの判断材料を集め、長期的に納得のできる決断をできることを心より祈っております。